Treatment
診療体制
腎臓では、腎糸球体という特殊な毛細血管が、血液をろ過するフィルターの働きをしており、老廃物やよけいな水分を尿中に排出し、生命維持のために必須な役割を果たしています。血管の老化は、腎臓の老化につながるため、健康な成人においても、年齢とともに腎臓の働きは低下していきます。尿所見の異常や、腎機能低下が慢性的に持続する状態を慢性腎臓病 (CKD)と呼びます。日本腎臓学会によると2008年時点で、1330万人の腎臓病患者がいると報告されており、日本人の成人の8人に1人が、慢性腎臓病に該当する可能性が指摘されています。
本邦においては、高齢化とともに、この割合はさらに増加していくことが考えられます。高血圧や糖尿病は、腎機能の低下を加速させる因子として代表的なもので、それぞれ高血圧性腎硬化症、糖尿病性腎臓病などと呼ばれます。その他に、腎臓の病気としては、急性腎炎、慢性腎炎、急速進行性腎炎、ネフローゼ症候群や、膠原病など全身性の疾患にともなう腎臓病、常染色体優性多発嚢胞腎などの遺伝性疾患があり、当科では、的確に診断・治療を行うことで、腎機能低下の進行速度を抑制することを目指します。
初診時には、紹介状と予約が必要となります。初診時の診察は火曜日・金曜日の午後となっておりますのでご注意お願いします。病院の役割分担の観点から、治療法が確定した患者さんや、状態が落ち着いた患者さんは、紹介元の医師に再度紹介差し上げて治療をお願いしています。ご理解、ご協力の程よろしくお願いします。
当科の特色
腎生検
腎生検目的の入院は、2泊3日で行っています。年間、約120~140例の腎生検が行われ、豊富な経験により、多岐にわたる腎疾患を診断、治療しています。
IgA腎症
耳鼻咽喉科との連携により、適応のある場合、扁桃腺摘出+ステロイドパルス療法など積極的な治療を行っています。
糸球体腎炎・ネフローゼ症候群、膠原病(ループス腎炎など)やANCA関連腎炎など
ステロイド・免疫抑制剤を中心に、適切な治療を行っています。
慢性腎臓病(CKD)
原因となった腎臓病の治療のみならず、適切な薬物療法、血圧管理、生活指導、栄養指導などにより末期腎不全への進行を抑制します。
末期腎不全
腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)についての情報提供を行い、患者さんに合った治療法の選択をお手伝いします。腎代替療法は看護師が中心に行っており、情報提供のみの外来受診も対応しています。血液透析の導入、腹膜透析の導入と管理、腎移植を行っています。慢性維持透析のための外来通院には対応していません。
腹膜透析
当科では全身麻酔・局所麻酔による腹膜透析カテーテル留置術を行っております。在宅透析ですのでご本人かご家族に手技を覚えてもらう必要があります。手技獲得困難な時は施設への入所や訪問看護の支援を得ながら実施することになります。
血液浄化療法
一般の血液透析のほか、限外ろ過 (ECUM)、血漿交換、血液吸着、白血球除去 (LCAP, GCAP)、クリオフィルトレーションなどを行っています。
腎臓リハビリテーション
入院患者さんにおいては、特に高齢の患者さんでは、早期からリハビリテーションを行うことにより、日常生活動作(ADL)レベルの低下を防ぎ、元気に退院していただくことを目指します。
生体腎移植
当院では、生体腎移植を行っています。生体腎移植は基礎疾患に限らず様々な患者さんに積極的に行っています。2006年年6月に当院での生体腎移植を再開し、現在は年間十数件の腎移植が行われています。手術と周術期は泌尿器科で、術前検査や術後の診療は当科で行っています。ABO血液型不適合(A型→B型やAB型→O型など)の腎移植も行っていますので、血液型の組み合わせが悪くて腎移植が不可能という事はありません。また、臓器移植ネットワークに登録して臓的提供を待機する方の登録施設になっております。希望される方はかかりつけ医師などを通して当科(循環器腎臓内科)へ相談ください。
腎移植に関する問い合わせ
生体腎移植のための資料
多発性嚢胞腎
常染色体優性多発性嚢胞腎とは、腎臓にたくさんの嚢胞ができる病気であり、最も頻度が高い遺伝性の嚢胞性腎疾患です。個人差がありますが、嚢胞が年齢とともに大きくなりおよそ60歳までに約半分の患者さんが末期腎不全になります。 症状は初期は無症状です。主な自覚症状としては腹痛や腰背部痛、血尿、腹部膨満などが挙げられます。また、合併症としては、高血圧、肝嚢胞、尿路結石、心臓弁膜症、クモ膜下出血などが挙げられます。
治療法は、これまでは血圧管理などの治療が一般的でしたが、2014年よりバソプレシン拮抗薬であるトルバプタン(商品名:サムスカ)が使用可能となりました。このお薬は、嚢胞の増大や腎機能低下を遅らせる効果があると報告されております。すべての患者さんに適応があるわけではありませんが、当科でも適応がある患者さんには積極的に投与を行っております。投与の際は専門医の診察のもと、入院での開始が必要です。当科では3泊4日の入院で行っております。なお、当院では、遺伝に関する正しい知識を持ち、社会的、心理的サポートを得ながら治療選択をしていただくために遺伝カウンセリングを受けることができます。
当院における多発性嚢胞腎専門外来
(腎臓内科が担当しています)
初診 | 火曜日・金曜日 |
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再来 | 金曜日 |
腎臓新患 | 午後※ |
予約、紹介状必須
予約(外来予約支援部門)
0172-39-5464
0172-39-5173
診療実績(2021年度)
入院患者 296名の内訳
腎生検目的 | 41名 |
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腎移植関連 | 73名 |
IgA腎症(ステロイドパルス目的) | 31名 |
ネフローゼ症候群(リツキシマブ導入目的) | 5名 |
その他ネフローゼ | 38名 |
多発性嚢胞腎(トルバプタン導入目的) | 8名 |
SLE | 1名 |
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腹膜透析関連 | 21名 |
その他慢性腎不全 | 9名 |
急性腎障害 | 20名 |
ANCA関連血管炎 | 5名 |
その他 | 62名 |
手術実績
内シャント作成 | 16件 |
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内シャント切除、瘤切除 | 5件 |
腹膜透析カテーテル挿入 | 9件 |
腹膜透析カテーテル抜去 | 1件 |